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下村流MBO型コーチング

「叱る」ことが苦手なリーダーに贈る!

「叱る」ことって、ほんとに効果があるの?

 

「叱る」ことで相手は何を得るのか?

会社勤めをしていた20代の頃、会社の代表者でもある直属の上司から社会的マナーを指摘されました。お帰りになるお客様のためにエレベーターのボタンを押すことや、お酒の席でいち早く酌をして回ること等を、お客様もおられるその場で強く指摘されました。すぐに対処はしましたが、恥ずかしさや情けなさと反発心のような気持ちが入り混じった複雑な気分になりました。今でも覚えているのですから私にとっては心理的なインパクトが大きかったのだと思います。正直なところ不快な経験ではありましたが、強く率直な指摘を頂いたおかげで、習慣の様に対処できるようになり、大人のマナーを自然に振る舞えるビジネスパーソンになることができました。あの経験がなければ、「周囲に配慮ができない傲慢な人」などと言われていたかもしれません。

 

それでは、「叱る」ことを通して、叱られた相手は何を得るのでしょうか?

・自分の改善点や望ましい姿を強いインパクトを伴って気づくことができる

・インパクトが強いがゆえに、同じような場面になると思い出すことができる

・当然に「叱られたくない」から改善しようとする

・他者の良し悪しを見極める目も養われるので、人を指導できるようになる

・組織においては、望ましい姿と指導力が伝承されていく

 

「叱る」ことがないと、何を失うのか?

逆に、「叱る」ことがないと、私たちは何を失うことになるのでしょうか?

・改善点や望ましくない点に気づくことが遅れる

・改善点に気づいていたとしても、許されると考えて修正しようとしなくなる

・周りの人たちはその人の改善点に気づいているが、本人だけが知らない状態が続く

・その望ましくない姿を、他者も真似る可能性が高くなる

 

叱ることで、いまある自分を認識させる

私は叱ること、けなすことによって、子供たちにそれぞれの現実を知ってもらいたいと思っているのです。現実の自分が「いかに未熟であるか」を知ってもらいたいからこそ叱るのです。自分の未熟さ加減を知るということは、言い換えれば、自分が進歩するための努力目標を見いだすということです。

※出典「愛があるなら叱りなさい」井村雅代(元シンクロナイズドスイミング日本代表コーチ) 幻冬舎

 

なぜ、私たちは「叱る」ことができないのか?

 

そもそも相手に対する関心がないために、その言動をよく見ていない

相手に対する関心が薄いと注目はしません。自分の子供の成長を気にかけるように、その相手に注目して、言動や傾向をよく見ることが、最初にやるべきことです。

 

相手に関心はあるが、「成長させてあげよう」という視点がない

私たちは、目的や動機がないと熱心に取り組みません。その相手を「成長させてあげよう!」という強い思いを持つことで、「では現状はどうなっているのか?」と見極めることを始めます。

 

改善点を放置することによる影響度を推測できない

私たちは、問題点を放置するとどんな危険があるのかを理解しないと行動しません。その相手の問題点が改善されずに、〇年経過したらどのような危険があるのかを推測することが必要です。

 

改善点を指摘することによる効用を知らない

私たちは、メリットが明らかでないと労力をかけた行動をとりません。その相手の問題点が改善されることで、どのようなメリットがあるのかを具体的に考えましょう。

 

相手を委縮させてしまうことへの恐れがある

相手を委縮させてしまうことを不安に思うと、「叱る」ことを躊躇します。そのような時には、相手の力(委縮しても逞しく回復する力を持っている)を信じて期待することで踏み込んだ関わりができます。例外は当然にありますが、健常な人は一度叱られたくらいで過度に委縮し続けることは少ないでしょう。

 

嫌われることへの恐れがある

「細かくて口うるさい人と思われたくはない」という思いを優先すると、「叱る」ことはできません。

自分の価値観に従わせることが目的ではなく、その人を成長させる、より良くさせることを第一の目的と考えて率直に伝えるべきです。「伸びる人はそういうことはしない!」と。

 

反発されることへの恐れがある

反発を過度に恐れていると「叱る」ことはできません。その恐れを超える「強い目的」や「動機」を自分の中で明らかにすることが必要です。そして、相手が反発を示したら「嫌がられても言う。成長してもらうために!」と答えたいものです。

 

自分もできていないのに・・といった自信のなさがある

自分ができていないと思うことを他者に要望することは難しい。しかし、なんでもかんでも自分ができるようになることを待っていては時間が足らなくなります。そんな場合には、一緒にやるという覚悟を決めることで「叱る」ことができます。「私も一緒に実行するから、〇〇くんもやりなさい!」

 

私も「叱る」ことができなかった

 

【準備】をすることで、叱ることができるようになった!

私は従来、「叱る」ことはおろか、人にちょっと注意することさえできないタイプの人間でした。誰にも嫌われたくない、いい人だと思われていたいという欲求が強かったのだと思います。ですから、人を気持ちよくさせるために「ほめる」ことはできますが、「叱る」ということはとてもできない性格でした。ところが、社会に出ますと(特に職場において)、すぐにリーダー的なポジションを与えられ、メンバーを「叱る」または「改善点を指摘する」ことを強く要望されるようになりました。

 

私はおおきな葛藤を抱えながら、「叱る」ことについてトライ&エラーを繰り返しました。その中で気づいたことは、苦手なことはその場で反射的にはできないということです。「叱る」べき瞬間に遭遇しても口が動かない。無理やり「叱る」ことを行ってもしどろもどろになってうまくいきませんでした。そこで考えたことは、「叱る」ための準備をすることでした。何をどのように叱るのかを整理して、一人でリハーサルをして、気持ちを奮い立たせて、そして「叱る」。その場ですぐに「叱る」ことが重要だということはわかりますが、私にはできなかったので、準備をして臨んでいました。ベストではないけれど、ある程度は通用しましたし、「叱る」ためのトレーニングになりました。

 

【目的(何のために/いつまでに)】を明確にすると、叱ることができた!

“強く叱ることで究極に鍛える”というスタイルの研修プログラムがあります。私は、講師としての役割を全うする(つまり、強く叱ることで鍛える)ために2年間ほど悪戦苦闘して、「叱る」ことについての秘策を獲得しました。それは、【目的(何のために/いつまでに)】を明確にすることでした。

私が設定したこの研修の目的は、“2-3日という限られた時間で、学んだことが習慣としてできるまでに鍛える”ということでした。そして、習慣的にできるようになってもらうためには、どのような指導が必要になるのかということを考え続けました。その結論としては、最高の集中力、圧倒的な経験回数、フィードバック(改善点を指摘する)などが必須であるということでした。

 

たった2日間で習慣にまで身につけさせてあげるためには、絶対に許されないという環境を与えてあげる必要がありました。つまり、本気で強く「叱る」ということでした。習慣的にできるようになるまで、何度も何度も「叱る」、やり直しをさせるということでした。講師にとっても疲弊しきってしまう厳しい内容です。しかしながら、人が短期間に何かを習得するためには、とても有効なアプローチだということがわかってきました。

 

率直に(不要な柔らかい表現をせずに)強く問題点を指摘すると、人は飛躍的に改善します。相手のために全力で「叱る」ことは、大切な行為だと思います。

 

「叱り」が苦手な人は『率直さ』を磨こう!

 

叱りと同じ効果を生み出す『率直さ』

叱ることの効果や叱ることができない理由がわかったとしても、できないことはできないという人もたくさんおられると思います。また、無理に叱ろうとすると、「叱る」ことのみが目的になり相手を不快にさせるだけになるかもしれません。そこで、叱ること以外に同じ効果を得られるものはないのか・・・とトライ&エラーを続けてみて、「これはいい!」と思える手法を発見しました。それは、『率直さ』という姿勢です。“不要に感情的になることなく、自分の考えを、端的に(はっきりと)伝える”という態度です。敢えて過度な説明を削除して、怒りなどの感情を爆発させずに、ただし結論をまっすぐに言うことです。少しの勇気を出して練習を重ねることで、できるようになります。

 

率直な表現の例 

「○○さん、挨拶は大きい声でしてください」

「○○さん、聞こえないです」

「○○さん、・・・はやめてほしい」

「○○さん、素晴らしい、それを続けてほしい」

 

枕詞を使うと相手は受け取りやすい

「〇〇さん、気になってずっと見ていたのだが・・・、あなたの今後を考えると何としても改善して欲しいことがあります。今から伝えるからよく聞いてほしい。」

「○○さん、あなたにはさらに成長して欲しいと思っています。そして、成長のために変えて欲しいことがあります。よく聞いて実行してください」

 

率直さには、パワーがあります。率直さは、相手の心に届く力があります。「叱る」ことに匹敵する影響がありながら、相手の感情を過度に害さない(相手が受け取りやすい)表現が可能になります。「叱る」ことが苦手な人は、率直さを磨きましょう。

 

率直に伝えるための5ステップ

叱ることだけではなく「率直」に伝えることも苦手だという人も多いでしょう。私自身もそうでした。しかし経験的には、「率直さ」は、叱ることよりも身に付けやすいと思います。ほんの少しの「勇気」を出すこと、「率直」に伝えるための準備やリハーサルを続けることで、意外に短期間で獲得できるものなのです。「率直さ」を身に付けるためには、以下の5ステップを何度も繰り返すことが有効です。緊張しながらも10回くらい繰り返しますと、かなり自信も生まれてくるでしょう。

 

  1. 自分の気持ちを確かめる(私は、本当はどう思っているのだろう?)
  2. 相手のためにという気持ちを湧きたたせる(この人のために伝えてあげるべきだ!)
  3. どのように伝えるかを考える(どのような言葉で、どのような態度表情で伝えようか?)
  4. 覚悟を決めて勇気を出す(自分の発言がどのように受け取られても良しとしよう!)
  5. 枕詞を添えて率直に話す(あなたの成長を考えて敢えて耳の痛いことを伝えます・・・)

 

最後に・・・

苦手な人にとって、「叱る」ことには大きなエネルギーが必要です。それだけに、「何のために、何を目指して叱るのか、或は、何のために率直に伝えるのか」という強い目的を持つことがもっとも影響があると思います。

「強い目的を持った時にこそ、リーダーシップが発揮される」と言えるのかもしれません。あなたがリーダーとして本当に求めていることに向かってイキイキと進むことを願っています。

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